SeqCap EZ 技術概要

SeqCapEZ_Choice_new.bmpのSeqCap EZ Library (シークキャップ イージー ライブラリ)は、標的とする領域(ターゲット領域)を選択的に抽出し、濃縮するための試薬で、特異的にターゲット領域と結合するように設計されたビオチン化DNAプローブの混合溶液です。専用機器は必要なく、1本のチューブ内で必要な反応工程が完結されるので、効率的に作業ができ、多数のサンプル処理にも適しています。

カタログ製品であるヒトエクソームキャプチャー用試薬の他に、研究対象のゲノム領域のみを指定してキャプチャーするためのカスタム製品もご提供しております。

 

■ SeqCap EZ の特徴

  • 圧倒的大多数のプローブでターゲットをカバー:  
      210万種類の長鎖プローブを使用することでターゲットに対して深く重なり合うようにプローブを設計。キャプチャーエラーによるシークエンシングの取りこぼしを防止!
  • カスタム製品に指定できるターゲットのサイズが広い:  
      カタログ製品(ヒトエクソーム)にカスタム領域を追加したり、ヒト以外の生物種のエクソームキャプチャーをしたり!
  • 小規模シークエンスでも良好なカバレージ:
      均一なシークエンスリードが得られるように独自のアルゴリズムでプローブを設計。シークエンス量を節約しても良好なシークエンス結果を取得!
  • 多検体処理も可能な簡単プロトコール:
      安定なDNAオリゴプローブを用いたチューブ内での反応!マルチウェルチューブも利用可能!
  • ヒトゲノムの解析には品質確認用コントロール領域を予め搭載:
      キャプチャー結果評価に使用するためのプローブ、プライマーの設計不要!

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(1)ターゲット領域の選択

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ターゲット領域とは、シークエンシングしたい特定のゲノム領域です。ターゲット領域としては、 特定の遺伝子群のエクソン 、 疾患関連領域などの特定のゲノム領域 、 エクソームや既知のESTなどの網羅的な断片領域 、など、自由に選択していただくことができます。総塩基サイズが各製品の仕様に収まるようにご選択ください。

ターゲット例)
  • 免疫系関連100遺伝子のエクソン: 0.45 Mb
      (" STAT1 Mutations in Autosomal Dominant Chronic Mucocutaneous Candidiasis, N Engl J Med 2011 " より)
  • DFNB79 領域(108遺伝子を含む9q34.3領域): 2.9Mb
      (" Targeted capture and next-generation sequencing identifies C9orf75, encoding taperin, as the mutated gene in nonsyndromic deafness DFNB79., Am J Hum Genet. 2010" より)

 

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▲非連続的な領域(左)、連続的な領域(右)のマッピング結果

3段目:ターゲット領域として設定した領域。
2段目:キャプチャー用プローブが設計された領域。
1段目:マッピング結果(リード/塩基)。 

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(2)プローブの設計(デザイン)

プローブの設計はエンリッチメントの成否とシークエンシング結果において最も重要です。
例えば、ターゲット領域に等間隔でプローブを配置するという標準的なタイリングデザインでは、特にエクソン領域をターゲットとした場合では、エクソン間でのカバレージプロファイルにバイアスが生じる傾向があり、良好なシークエンスパフォーマンスが得られない場合があることが実証されています。

ヒトエクソームなどの解析を行う場合にはお客様側でデザインを行う必要はございません。最適化済みの弊社カタログ製品から適切な製品をご選択ください。

また、SeqCap EZ Designs は、実績のあるデザインを研究者間で共有しようというコンセプトでラインナップされています。登録されているデザインは、新規デザインのご依頼なしでご利用いただくことができます。

カスタムターゲットを解析される場合には、生物種とターゲットサイズに応じてカスタム製品をご選択いただき、オンラインソフトウェアである NimbleDesign を用いるか専任のインフォマティシャンに依頼するかのどちらかの方法でカスタムプローブの設計(デザイン)を行ってください。詳細は こちら をご参照ください。

 

○ 圧倒的大多数のプローブを利用

最大210万種類という圧倒的に大多数のプローブが利用可能であることから、ターゲットに対して複数のプローブを割りあてることができます。プローブ同士は互いに重なり合う位置に配置されますので、例えばミスマッチやインサーションが入ったゲノム断片が、ある1つのプローブでキャプチャーできなかった場合でも近傍のプローブによりキャプチャーされます。このようにプローブを厚く配置することにより、シークエンスデータの取りこぼしを防ぐことが可能なのです。

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▲シークエンスキャプチャープローブ設計模式図  

 

○ 最適化された独自のプローブ設計アルゴリズム

SeqCap EZ では長鎖のオリゴヌクレオチドをプローブとして利用しますが、その長さは一定ではなく、リファレンスとなる遺伝子配列に応じて長さを可変させ、Tm値がなるべく一定となるように調整されています。さらに、お互いに重なり合うプローブ同士は一定の間隔で配置されているわけではありません。これまでの数多くの実験によって得られた知見に基づく独自のアルゴリズムでプローブが深く重なりあう領域や広く間隔の空いた領域を作ることにより、均一性の高いシークエンシング結果が得られます。

probe_length_overlap.bmp

▲シークエンスキャプチャー用プローブ設計模式図

均一なシークエンシング結果とは、ゲノム上の様々なターゲット領域に対するカバレージの差が小さいことを意味します。均一性が低いと、シークエンスリードの大部分が一部のターゲットに集中し、読みたい領域の一部が必要以下のカバレージしか得られず、結果的に再度シークエンシングを実施することが必要となる場合があります。均一性が高い場合、結果的に少量のシークエンスデータで十分な解析結果を得ることが可能となります。

sequence_uniformity.bmp

▲プローブ設計アルゴリズムとシークエンシングリードの関係模式図

 

○ 独自のリピートマスク法

ゲノム配列上には高度に反復して出現するリピート領域が分散しています。ハイブリダイゼーション実験用のプローブはこれらのリピート領域を含まないように設計する必要がありますが、一般的なリピートマスク法を適用すると、ゲノム上の約50%がマスクされてしまい、プローブ設計可能領域が極端に狭まってしまいます。SeqCap EZ では独自の方法でリピート領域をマスクすることで特異性を保ちながらプローブ設計可能対象範囲を広くとることができます。このため、プローブが設計できないために研究対象のゲノム領域のシークエンスデータが得られない、という事態を避けることができるのです。

repeat_masking.bmp

▲各リピートマスク法でマスクされた領域(白)と、プローブ設計可能領域(黒)

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(3)デザインの確認・承認

全てのカスタムデザインは、製品の製造前に必ずデザイン結果をご確認いただいています。了解の旨の確認が取れない場合には製品の製造に進めませんのでご注意ください。なお、非常に小さい領域をターゲット領域として指定した場合には、ターゲット領域を両外側に拡張することで目的領域が確実にキャプチャーされるよう工夫したりしていますので、ターゲット領域とプローブカバー領域が完全に一致することはありません。

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▲お客様の指定したターゲット領域と Roche NimbleGen によるデザイン結果のプローブ設計領域模式図

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(4)製品のお届け

カスタム製品の場合、ご注文(デザイン承認)いただいてからおおよそ 5 週間でのお届けとなります。

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(5)ライブラリの調製

SeqCap EZ実験ワークフローは大きく「ライブラリ調製」の段階と「ハイブリダイゼーション」の段階の2つに大別することができます。「ライブラリ調製」の段階では、使用予定のシークエンサーに合わせてゲノムDNA からショットガンシークエンシング用ライブラリを作製します。それぞれの検体から得られたゲノム断片にインデックス(バーコード)入りのアダプターを結合させることで、検体毎に異なるインデックス(バーコード)配列を導入できます。それぞれの検体別の操作となりますので、検体数分の反応数のキットが必要です。

Lib_prep.bmp

概要)
ゲノムDNAを断片化・末端平滑化します。 (断片サイズは使用予定のシークエンサーに応じて変更してください)

使用するシークエンサーに応じたアダプターをゲノム断片の両端に結合させます。

少数サイクルのLM-PCR(LM-PCR: Ligation Mediated PCR)により増幅します。

 

NEW!! Illumina社のシークエンサーを使用する場合の新しい実験プロトコール「 HyperCap 」がリリースされました。「HyperCap」プロトコールは、KAPA Hyper Kit / KAPA HyperPlus Kit を採用した SeqCap EZ 用の新しいプロトコールです。ライブラリキットを変更することによる効率化&迅速化、というだけでなく、ハイブリや洗浄などの SeqCap EZ の操作プロセスを全体的に見直ししています。プロトコールは こちら のページからダウンロードすることができます。

  • 迅速で合理的なワークフロー: ライブラリ調製だけではなくワークフロー全体を迅速化、合理化
  • パフォーマンスの向上: ライブラリ作成効率の向上によるバイアスの低減
  • 幅広いオートメーション機器に対応: フルオートメーション化を阻む機器を使用しない

  • SeqCapProtocols.png

▲SeqCap EZ の各プロトコールと特徴

SeqCap EZ の実験プロセスは幅広いオートメーション機器に対応しています。Sciclone NGS (Next Generation Sequencing) Workstationによるサンプル調製とキャプチャーについては こちら のページをご参照ください。その他の機器での対応状況につきましては随時お問い合わせください。

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(6)ハイブリダイゼーション・キャプチャー

「ライブラリ調製」の段階と「ハイブリダイゼーション」の段階の2つに大別されるSeqCap EZ実験ワークフローのうち「ハイブリダイゼーション」の段階では、マルチプレックスキャプチャー法により、シークエンサーを効率良く使用し、検体あたりの解析コストを下げることが可能です。それぞれ異なるインデックスを付加させたライブラリを混合(プール)して操作をしますので、ハイブリダイゼーション反応数分のキットが必要です。
index_capture.bmp

▲マルチプレックスキャプチャー法 模式図 
右(プレキャプチャーマルチプレックス):  バーコードの付加されたアダプターを使用してライブラリを調製し、それぞれのライブラリから一定量ずつを混合してハイブリダイゼーション&キャプチャーを実施します。得られた混合キャプチャー済みサンプルをシークエンシングに用います。
 ⇒ 詳細、データのページへ

Hyb_capture.bmp

概要)
調製したゲノムライブラリをSeqCap EZ Libraryと混合し、ハイブリダイゼーションを行います。

SeqCap EZ Libraryはビオチンが付加されたDNA オリゴプローブ混合溶液ですので、ストレプトアビジンビーズを添加することで、プローブオリゴとゲノムDNA 断片の複合体を回収します。

ストレプトアビジンビーズで結合しなかった断片を洗浄除去します。

エンリッチされた断片プールをLM-PCR で増幅します。

 

ハイブリダイゼーションに用いるライブラリ分子は LM-PCR で増幅したものを用います。このため、この、両端にアダプター配列を持つ 2 本鎖 DNA をハイブリダイゼーションに用いると、アダプター配列同士でのハイブリダイゼーションが起こり、プローブに特異的ではない分子が回収されてしまう可能性があります。Roche NimbleGen の各プロトコールでは、このような非特異的ハイブリダイゼーションを防ぐために、HE オリゴ ( Hybridization Enhancing Oligo ) を添加するよう推奨しています。これはアダプター配列をブロックするためのオリゴ DNA ですので、使用するシークエンサーの種類によって HE オリゴ の配列は異なります。

 HEO.bmp

▲非特異的ハイブリダイゼーションを防止する HE オリゴ 模式図

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(7)エンリッチメントの確認

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ハイブリダイゼーション・キャプチャーの前後で、ターゲット領域が濃縮されているかどうかを確認します。

ヒトキャプチャーの場合には、SeqCap EZ Library に予めコントロールプローブが含まれています。エンリッチメントの成否を評価するためのプローブをご自身で設計する必要はありません。ヒト以外の生物種での実験の場合には、プローブ設計箇所からいくつかの領域をピックアップして、qPCR プライマーセットを設計してエンリッチメントQCを行ってください。

概要)
ハイブリダイゼーション前後のサンプルをそれぞれ等量ずつテンプレートとして分取し、リアルタイムPCRを行います。

Ct値(Cp値)の差から、コントロールlociのエンリッチメント倍率を算出します。

十分にエンリッチされているキャプチャー済みサンプルは、emPCR や Cluster PCRなどのシークエンシングプロセスの増幅工程に進めます。

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(8)シークエンシング

実験を計画する前に、使用するシークエンサーを決定してください。

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■ シークエンスキャプチャーワークフロー(9)データ解析 

シークエンシング結果(シークエンシングリード)は、リファレンスゲノム配列に対してマッピングを行います。リファレンスゲノム配列の特定の塩基に対するシークエンスリードの数がカバレージ ( read depth, 冗長度 ) です。シークエンシング規模を大きくするとカバレージは大きくなります。

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▲カバレッジ模式図

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▲マッピング結果例

ゲノムの断片化は、ランダムな位置で切断される方法(超音波、酵素等)で行いますので、調製したライブラリDNAプールには同一ゲノム領域に対して長さと位置の異なる複数分子種の断片が含まれます。このため、1つのプローブからキャプチャーされると予測されるゲノム領域は1種類のプローブの両側に広がり、プローブ配列の箇所が最もカバレージが厚く、端ほど薄くなると予想されます。

captured_genome_fragments.bmp

▲プローブとライブラリ分子のハイブリダイゼーションイメージ

 

様々な初発ゲノムDNA量を用いたエクソームキャプチャーでのシークエンスカバレージの比較
▲図1 様々な初発ゲノムDNA量を用いたエクソームキャプチャーでのシークエンスカバレージの比較
1μg、100ng、10ngのゲノムDNAを用いて新しい実験ワークフローでエクソームエンリッチメントを行い(KAPA Library Preparation Kit等を用いてライブラリを調製し、SeqCap EZ Human Exome Library v3.0でエクソームをキャプチャー)、Illumina社HiSeqシークエンサーで解析を行いました。ランダムに抽出した7500万リードを解析し、各塩基あたりのシークエンスリードのカバレージ分布を調べました。10ngというような少量の初発サンプルから実験を行った場合でも1μgを使用した場合と同等のカバレージが得られていました。

 

新しい実験ワークフローでは幅広いGC含量の領域に対して均一なカバレージを達成
▲図2 新しい実験ワークフローでは幅広いGC含量の領域に対して均一なカバレージを達成
新しい実験ワークフローで調製したエクソームエンリッチメント(青)と、新しい実験ワークフローで指定された試薬とは別の試薬や酵素を用いて調製したもの(赤)を、それぞれ、Illumina社HiSeqシークエンサーでシークエンシングを行いました。シークエンスリードカバレージをGC含量別に調べたところ、青線の条件では低GC領域と高GC領域でのカバレージが向上しており、幅広いGC含量の領域に対して均一なカバレージが得られることが示され、GC含量によるバイアスが抑えられます。

 

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